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あ行
アップ・ヒル・クエンチング
焼入れ部品の残留応力を除去する方法のひとつ。
焼入れのため急冷したものを、-196℃ぐらいまで、サブゼロ処理したののち、お湯等で急熱する。急冷と逆の応力がかかり、焼入れ応力がキャンセルされることとなる。
α鉄 (アルファてつ)
鉄の同素体で、A3変態点(910℃)以下の鉄をいう。結晶構造は、体心立方晶型。α鉄に対する炭素の溶解度は、常温においては、0.006%で、725℃で最大になりその量は0.04%である。
異常組織 (いじょうそしき)
浸炭後の組織において、セメンタイトの網目が太くなり、これとパーライトとが直接には界せず、その中間にフェライトがあって、これがある幅をもってセメンタイトに取り巻いており、しかも、パーライトの層状も整然としていないような組織を異常組織という。
オーステンパ
鉄鋼製品の焼入れによる変形の発生や焼き割れを防ぐとともに、強靭性を与えるため、AC3又はAC1変態点以上の適切な温度に加熱して、安定なオーステナイト組織にしたものを、変態を阻止して、フェライト、パーライト組織生成温度以下、マルテンサイト生成温度以上の適切な温度範囲に保持した冷却剤中に急冷し、その温度でベイナイトに変態させた後、室温まで冷却する方法。代表的なものに、バネ材の焼入れがある。
か行
ガス窒化
金属製品をアンモニア中で加熱し窒化する方法。
一般的に510℃前後で数十時間の長時間処理となる。純窒化処理とも言われ、軟窒化等とは異なる。(1923年ドイツ・クルップ社、アドルフ・フリー博士によって発見)
クライオ処理
一般的には超サブゼロ処理を言われ、-196℃の液体窒素を用いた処理。耐摩耗性の改善、組織の微細化、経年変化防止等に使用されている。
又、金型材料(ダイス鋼等)のマルテンサイト変態終了温度は、-130℃前後といわれ、その温度以下で処理される。
さ行
サブゼロ処理
鉄鋼製品の耐摩耗性の向上、経年変化(寸法)を防ぐために、焼入れ直後に0℃以下の低温度に冷却する処理。一般的には、-70℃までの温度域で行なわれる。基本的には、焼入れ後に残留するオーステナイトをマルテンサイト化する処理(マルテンサイト化率を上げる)。
浸炭焼入れ
鉄鋼製品の表面層の炭素量を増加させるために、浸炭剤中で加熱し、目標とする深さに達する時間まで保持し、その後、焼入れを行なう方法。
浸炭剤により、ガス浸炭、真空浸炭、液体浸炭、適中浸炭、固体浸炭等に分類される。
浸硫窒化 (しんりゅうちっか)
窒素を主体として、炭素、硫黄などを拡散させ、軟窒化層を形成させる処理。
特に、硫化物による摩擦係数の低減が期待できる処理である。材質により仕上がり色が異なる。
ソルバイト
ソルバイトは、α 鉄と微粒セメンタイトの機械的混合物で、マルテンサイトを500から600℃に焼戻した場合、並びに焼入れの際、A1変態を600から650℃において生ぜしめたときに得られる組織です。
マルテンサイトと比較して、硬くも脆くもなく、パーライトよりは硬くて、強靭で衝撃抵抗が大である。又、低温脆性にもつよく、工業上重要な組織である。UK:Sorbyの名から命名。
た行
トルースタイト
焼入れによってえられたマルテンサイトは、硬くてもろい性質があります。マルテンサイトを約400℃に焼戻した場合、ならびに焼入れの際、A1変態を550℃から600℃において生ぜしめたときに得られる組織です。
焼戻しによってえられるトルースタイトは、セメンタイトの極微粒がんマルテンサイトの生地から析出した状態を表すもので、焼戻しトルースタイトという。マルテンサイトに次ぐ硬さがあり、弾性限界が高く、マルテンサイトより粘い性質があります。しかしながら錆やすい欠点があります。
フランス人:TROOSTが発見者。
な行
軟窒化 (なんちっか)
金属製品を適切な温度で加熱し、その表面に、窒素を主体とし炭素又は酸素を同時に拡散させ、窒化層を形成させる方法。
代表的なものとして、ガス軟窒化処理、塩浴軟窒化がある。又、当社が開発したPSN処理も軟窒化処理のひとつです。
は行
パーライト
フェライトとセメンタイトの共析晶をパーライトという。フェライトとセメンタイトの薄片がお互いに層状になっており、検鏡するとパール(真珠)のような光沢を出すところから命名された。
パーライト組織は、オーステナイトから焼鈍したときに得られる組織です。逆に、A1変態点以上の温度(726℃)においてオーステナイト組織に変化する。パーライト中の炭素濃度は0.85%である。
ベイナイト
ベイナイトとは、炭素鋼、合金鋼を焼入れ温度から150℃から550℃(Ar'とAr"変態点との中間温度)の熱浴に焼入れして恒温変態をおこさせたときに生ずる組織をいう。組織的には、黒色の針状組織で、一見、針状マルテンサイトと見分けがつかない場合がある。
ベイナイトには2種類あり、高ベイナイトの場合、羽毛状で、低ベイナイトの場合は針状である。
ま行
マルテンサイト
炭素を固溶しているα鉄、すなわちα固溶体をマルテンサイトといい、焼入れ組織のひとつである。
ドイツ人マルテンの名によって命名されたものである。結晶構造は、体心正方晶(αマルテンサイト)及び体心立方晶で(βマルテンサイト)で、顕微鏡組織観察では、麻状、針状の組織として観察出来る(麻留田)。鋼を焼入れして、Ar¨変態を生ぜしめたとき、又はオーステナイトを常温加工したときにえられる組織で、不安定なものである。
鋼の焼入れ組織中でもっとも硬く、脆く、強磁性を有し、オーステナイトより密度が小さい。
マルテンパ
鉄鋼製品の焼入れによる変形の発生や焼き割れを防止する、かつ適切な金属組織を得るため、マルテンサイト生成温度域の上部、又はそれよりやや高い温度に保持した冷却剤中に焼入れして、各部が一様にその温度になるまで保持した後、徐冷する処理。マルクエンチとも言う。
や行
焼入れ
金属製品を所定の高温状態から急冷する処理。
鉄鋼材料では、オーステナイト域から、その材料にあった冷却スピードを選定しマルテンサイト組織に変態させる処理。用途によって、焼入れ温度、冷却方法を調整し、用途にあった機械的性質を与える処理。
焼鈍し (やきなまし)
金属の機械的性質を変化させ、残留応力の除去、硬さの低減、被削性の向上、冷間加工性の改善、結晶粒の改善、化学組成の均一化等行なう処理の総称です。代表的なものとして、機械応力除去焼鈍、完全焼鈍し、磁性焼鈍等があります。
焼戻し
焼入れした組織を、変態又は析出を進行させて安定な組織に近づけ、所要の性質及び状態を与えるために、適切な温度に加熱し、冷却する処理。
鉄鋼材料においては、A1変態点以下の温度に加熱する。
A1変態
鋼の共析変態をA1変態といいこの変態の起こる温度をA1変態点という。A1変態は、鋼、鋳鉄のみに存在するもので、その温度は、726℃で、炭素含有量には無関係である。加熱時のA1変態をAC1、冷却時の変態をAr1という。 オーステナイト⇔パーライト
A2変態
鉄の磁気的変態をA2変態といい、その温度をA2変態点またはキュリー点という。鉄は、A2変態点以下では、強磁性体であるが、それ以上では、常磁性体となる。
純鉄のA2変態点は、約770℃で、炭素が添加されてもその温度にはあまり変化せず、殆ど一定である。そして、約0.5%CにおいてA3変態点と合致し、以後、炭素量の増加とともにA3変態点上をたどり、0.85%CにおいてA1変態点と一致する。
A3変態
鉄の同素変態のひとつで、α 鉄(体心立方晶型) ⇔ γ 鉄(面心立方晶型)の変化を言う。鉄のA3変態点は、約910℃である。鉄に炭素が含有されれば、量に応じて、A3変態点は、0.85%Cで726℃となる。
AC3:加熱の際、フェライトがオーステナイトへの固溶の終止。Ar3:冷却の際、オーステナイトからフェライトの析出開始となる。
Ar’変態
鋼の焼入れの際、急冷により生ずるA3変態の遅滞変態の1つで、直接オーステナイトから結節状ツルース体との生ずる変態を言う。Ar’変態は約600℃において起こる。Ar’変態の発生を抑制する最小の焼入れ速度を上部臨界冷却速度又は臨界速冷却速度という。
Ar”変態
鋼の焼入れの際、オーステナイトがマルテンサイトに変化する変態をAr”変態いう。Ar”変態点は、鋼の炭素量が増せば降下するが、その温度は冷却速度を増しても変化することがなく一定である。(条件つき)
Ar”変態のみをおこさせるに要する最小の焼入れ冷却速度を上部臨界冷却速度、Ar’とAr”変態を共におこさせるに要する最小の冷却速度を下部臨界冷却速度という。
Ms点
冷却時におけるオーステナイトからマルテンサイト変態の始まる温度。
添加元素により
Ms=550-350×%C-40×%Mn-35×%V-20×%Cr-17×%Ni-10×%Cu-10×%Mo-5×%W+15×%Co+30×%Al+0×%Si
で算出される。