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あ行

亜共晶 (あきょうしょう)

共晶組成(C4.3%)のものよりも低炭素のものを亜共晶といい、オーステナイトを初晶として晶出する。

亜共析鋼 (あきょうせきこう)

炭素を0.85%以下含む鋼を亜共析鋼といい、標準組織は、初析フェライト+パーライトである。

アップ・ヒル・クエンチング

焼入れ部品の残留応力を除去する方法のひとつ。
焼入れのため急冷したものを、-196℃ぐらいまで、サブゼロ処理したののち、お湯等で急熱する。急冷と逆の応力がかかり、焼入れ応力がキャンセルされることとなる。

α鉄 (アルファてつ)

鉄の同素体で、A3変態点(910℃)以下の鉄をいう。結晶構造は、体心立方晶型。α鉄に対する炭素の溶解度は、常温においては、0.006%で、725℃で最大になりその量は0.04%である。

異常組織 (いじょうそしき)

浸炭後の組織において、セメンタイトの網目が太くなり、これとパーライトとが直接には界せず、その中間にフェライトがあって、これがある幅をもってセメンタイトに取り巻いており、しかも、パーライトの層状も整然としていないような組織を異常組織という。

イオン窒化

グロー放電による窒化をイオン窒化法という。詳細は、こちらを参照。

ウッドマンステッテン組織

亜共析鋼γ相から長時間にわたってゆっくり冷やすと、フェライトがオーステナイトの粒界とへき開面とに析出した微細な格子状の組織のことをいう。

エンリッチガス

浸炭性ガス雰囲気のカーボンポテンシャルを増加させるために添加する炭化水素などのガス。

応力除去焼鈍し (おうりょくじょきょやきなまし)

加工歪、残留応力を除去するために行なう焼鈍しで、鉄鋼材料の場合、AC1変態点以下の適切な温度に加熱、保持した後、通常は徐冷する処理。

オーステンパ

鉄鋼製品の焼入れによる変形の発生や焼き割れを防ぐとともに、強靭性を与えるため、AC3又はAC1変態点以上の適切な温度に加熱して、安定なオーステナイト組織にしたものを、変態を阻止して、フェライト、パーライト組織生成温度以下、マルテンサイト生成温度以上の適切な温度範囲に保持した冷却剤中に急冷し、その温度でベイナイトに変態させた後、室温まで冷却する方法。代表的なものに、バネ材の焼入れがある。

か行

カーボンポテンシャル

一般的にCP値という値で示される。製品を加熱する雰囲気の浸炭能力。
浸炭温度でガス雰囲気と平衡に達したときの鋼の表面の炭素濃度で示す。

ガス浸炭

鋼製品を浸炭性ガス(ブタン、プロパン、炭酸ガス)等の雰囲気中で加熱し浸炭を行なう処理。JISB6914参照ください。

ガス窒化

金属製品をアンモニア中で加熱し窒化する方法。
一般的に510℃前後で数十時間の長時間処理となる。純窒化処理とも言われ、軟窒化等とは異なる。(1923年ドイツ・クルップ社、アドルフ・フリー博士によって発見)

完全焼鈍し (かんぜんやきなまし)

鉄鋼材料において、結晶粒を調整するため、AC3又はAC1変態以上の適切な温度に加熱、保持した後、通常、徐冷する処理。

クライオ処理

一般的には超サブゼロ処理を言われ、-196℃の液体窒素を用いた処理。耐摩耗性の改善、組織の微細化、経年変化防止等に使用されている。
又、金型材料(ダイス鋼等)のマルテンサイト変態終了温度は、-130℃前後といわれ、その温度以下で処理される。

光輝焼入(熱処理) (こうきやきいれ)

炉内を保護雰囲に調整し、表面酸化、脱炭等を防止し、処理後の表面状態として光輝性をもった状態を保護する熱処理の総称。

さ行

サブゼロ処理

鉄鋼製品の耐摩耗性の向上、経年変化(寸法)を防ぐために、焼入れ直後に0℃以下の低温度に冷却する処理。一般的には、-70℃までの温度域で行なわれる。基本的には、焼入れ後に残留するオーステナイトをマルテンサイト化する処理(マルテンサイト化率を上げる)。

酸窒化

窒素を主体とし拡散させ、最表面に酸素を拡散し、酸窒化層を形成する方法で、酸化鉄による潤滑性、耐食性の改善が期待できる。

真空熱処理

減圧下で、炉内中の大気(特に酸素)を低減し、熱処理する方法で、表面酸化を防止することが最大の目的で行なわれます。真空焼入れ、真空焼鈍、真空固溶化熱処理等が代表的なものです。

真空焼入れ

真空炉を使用し、真空又は不活性ガス中で加熱後、水、油、ガス媒体にて冷却する処理。一般的に窒素ガスで冷却される。

浸炭焼入れ

鉄鋼製品の表面層の炭素量を増加させるために、浸炭剤中で加熱し、目標とする深さに達する時間まで保持し、その後、焼入れを行なう方法。
浸炭剤により、ガス浸炭、真空浸炭、液体浸炭、適中浸炭、固体浸炭等に分類される。

浸硫窒化 (しんりゅうちっか)

窒素を主体として、炭素、硫黄などを拡散させ、軟窒化層を形成させる処理。
特に、硫化物による摩擦係数の低減が期待できる処理である。材質により仕上がり色が異なる。

ソルバイト

ソルバイトは、α 鉄と微粒セメンタイトの機械的混合物で、マルテンサイトを500から600℃に焼戻した場合、並びに焼入れの際、A1変態を600から650℃において生ぜしめたときに得られる組織です。
マルテンサイトと比較して、硬くも脆くもなく、パーライトよりは硬くて、強靭で衝撃抵抗が大である。又、低温脆性にもつよく、工業上重要な組織である。UK:Sorbyの名から命名。

た行

タフトライド

塩浴軟窒化法のひとつで、ドイツのデグサ社が開発した窒化方法で商品名である。環境維持等、設備管理が重要で、変わるものとして、ガス軟窒化法が現在、普及。

窒化 (ちっか)

金属製品の表面層に窒素を拡散させ、表面を硬化させる処理。
(軟窒化、酸窒化、浸硫窒化等の総称として、窒化系処理という場合あり)

調質 (ちょうしつ)

鉄鋼製品を焼入れ硬化後、比較的高い温度(400℃以上)に焼戻して、ツールスタイト、又はソルバイト組織にする処理。鉄鋼JISに材料別に記述あり。

低温焼鈍し (ていおんやきなまし)

軟化、残留応力の低減のために、鉄鋼材料では、AC1変態点以下の適切な温度に加熱、保持し、通常は徐冷する処理。

トルースタイト

焼入れによってえられたマルテンサイトは、硬くてもろい性質があります。マルテンサイトを約400℃に焼戻した場合、ならびに焼入れの際、A1変態を550℃から600℃において生ぜしめたときに得られる組織です。
焼戻しによってえられるトルースタイトは、セメンタイトの極微粒がんマルテンサイトの生地から析出した状態を表すもので、焼戻しトルースタイトという。マルテンサイトに次ぐ硬さがあり、弾性限界が高く、マルテンサイトより粘い性質があります。しかしながら錆やすい欠点があります。
フランス人:TROOSTが発見者。

な行

軟窒化 (なんちっか)

金属製品を適切な温度で加熱し、その表面に、窒素を主体とし炭素又は酸素を同時に拡散させ、窒化層を形成させる方法。
代表的なものとして、ガス軟窒化処理、塩浴軟窒化がある。又、当社が開発したPSN処理も軟窒化処理のひとつです。

は行

パーライト

フェライトとセメンタイトの共析晶をパーライトという。フェライトとセメンタイトの薄片がお互いに層状になっており、検鏡するとパール(真珠)のような光沢を出すところから命名された。
パーライト組織は、オーステナイトから焼鈍したときに得られる組織です。逆に、A1変態点以上の温度(726℃)においてオーステナイト組織に変化する。パーライト中の炭素濃度は0.85%である。

プレスクエンチ

金属製品を焼入れによる歪が出ないように、プレスして行なう焼入れ方法。

ベイナイト

ベイナイトとは、炭素鋼、合金鋼を焼入れ温度から150℃から550℃(Ar'とAr"変態点との中間温度)の熱浴に焼入れして恒温変態をおこさせたときに生ずる組織をいう。組織的には、黒色の針状組織で、一見、針状マルテンサイトと見分けがつかない場合がある。
ベイナイトには2種類あり、高ベイナイトの場合、羽毛状で、低ベイナイトの場合は針状である。

ベイナイト焼入れ

1次ベイナイトの得られるような焼入れをベイナイト焼入れという。オーステンパーはそのひとつである。特に、高速度鋼の焼入れに推奨されている。

ま行

マルテンサイト

炭素を固溶しているα鉄、すなわちα固溶体をマルテンサイトといい、焼入れ組織のひとつである。
ドイツ人マルテンの名によって命名されたものである。結晶構造は、体心正方晶(αマルテンサイト)及び体心立方晶で(βマルテンサイト)で、顕微鏡組織観察では、麻状、針状の組織として観察出来る(麻留田)。鋼を焼入れして、Ar¨変態を生ぜしめたとき、又はオーステナイトを常温加工したときにえられる組織で、不安定なものである。
鋼の焼入れ組織中でもっとも硬く、脆く、強磁性を有し、オーステナイトより密度が小さい。

マルテンパ

鉄鋼製品の焼入れによる変形の発生や焼き割れを防止する、かつ適切な金属組織を得るため、マルテンサイト生成温度域の上部、又はそれよりやや高い温度に保持した冷却剤中に焼入れして、各部が一様にその温度になるまで保持した後、徐冷する処理。マルクエンチとも言う。

や行

焼入れ

金属製品を所定の高温状態から急冷する処理。
鉄鋼材料では、オーステナイト域から、その材料にあった冷却スピードを選定しマルテンサイト組織に変態させる処理。用途によって、焼入れ温度、冷却方法を調整し、用途にあった機械的性質を与える処理。

焼鈍し (やきなまし)

金属の機械的性質を変化させ、残留応力の除去、硬さの低減、被削性の向上、冷間加工性の改善、結晶粒の改善、化学組成の均一化等行なう処理の総称です。代表的なものとして、機械応力除去焼鈍、完全焼鈍し、磁性焼鈍等があります。

焼ならし

鉄鋼製品の前加工の影響を除去し、結晶粒を微細化して機械的性質を改善するために、AC3又はACM変態点以上の適切な温度に加熱した後、通常は空気中で冷却する処理。

焼戻し

焼入れした組織を、変態又は析出を進行させて安定な組織に近づけ、所要の性質及び状態を与えるために、適切な温度に加熱し、冷却する処理。
鉄鋼材料においては、A1変態点以下の温度に加熱する。

溶体化処理

合金元素が固溶体に溶解する温度以上に加熱して、十分な時間保持し、急冷して、その析出を阻止する処理。固溶化熱処理とも言う。(JIS G0201参考)




A1変態

鋼の共析変態をA1変態といいこの変態の起こる温度をA1変態点という。A1変態は、鋼、鋳鉄のみに存在するもので、その温度は、726℃で、炭素含有量には無関係である。加熱時のA1変態をAC1、冷却時の変態をAr1という。 オーステナイト⇔パーライト

A2変態

鉄の磁気的変態をA2変態といい、その温度をA2変態点またはキュリー点という。鉄は、A2変態点以下では、強磁性体であるが、それ以上では、常磁性体となる。
純鉄のA2変態点は、約770℃で、炭素が添加されてもその温度にはあまり変化せず、殆ど一定である。そして、約0.5%CにおいてA3変態点と合致し、以後、炭素量の増加とともにA3変態点上をたどり、0.85%CにおいてA1変態点と一致する。

A3変態

鉄の同素変態のひとつで、α 鉄(体心立方晶型) ⇔ γ 鉄(面心立方晶型)の変化を言う。鉄のA3変態点は、約910℃である。鉄に炭素が含有されれば、量に応じて、A3変態点は、0.85%Cで726℃となる。
AC3:加熱の際、フェライトがオーステナイトへの固溶の終止。Ar3:冷却の際、オーステナイトからフェライトの析出開始となる。

Acm変態

過共析鋼(0.85%から2.1%C)のみに存在する変態で、炭素量の上昇とともに変態点も上昇する。加熱:ACcm、冷却Arcm変態という。

AISI

アメリカ鉄鋼学会。

Ar点

臨界温度帯。

Ar’点

臨界冷却速度。

Ar”点

Ms点、臨界冷却速度。

Ar’変態

鋼の焼入れの際、急冷により生ずるA3変態の遅滞変態の1つで、直接オーステナイトから結節状ツルース体との生ずる変態を言う。Ar’変態は約600℃において起こる。Ar’変態の発生を抑制する最小の焼入れ速度を上部臨界冷却速度又は臨界速冷却速度という。

Ar”変態

鋼の焼入れの際、オーステナイトがマルテンサイトに変化する変態をAr”変態いう。Ar”変態点は、鋼の炭素量が増せば降下するが、その温度は冷却速度を増しても変化することがなく一定である。(条件つき)
Ar”変態のみをおこさせるに要する最小の焼入れ冷却速度を上部臨界冷却速度、Ar’とAr”変態を共におこさせるに要する最小の冷却速度を下部臨界冷却速度という。

Hバンド

ジェミニー試験によって得られる硬さ変化曲線の上限値と下限値とのバンドを焼入れバンド、略してHバンドという。

Mf点

冷却時におけるオーステナイトからマルテンサイト変態の終了する温度。

Ms点

冷却時におけるオーステナイトからマルテンサイト変態の始まる温度。
添加元素により
Ms=550-350×%C-40×%Mn-35×%V-20×%Cr-17×%Ni-10×%Cu-10×%Mo-5×%W+15×%Co+30×%Al+0×%Si
で算出される。

S曲線

A1変態点以下の各温度におけるオーステナイトの分解(変態)状況をS曲線で表す。特に過冷オーステナイトがパーライト、ベイナイト、マルテンサイトなどに変態する状況が分かる。TTT曲線とも言う。鋼の焼入れに関しては基本中の基本である。

TTA曲線

恒温オーステナイト化曲線のことで、パーライト組織のものを変態点以上の温度に過熱したとき、恒温保持によっていかにオーステナイトに変化していくかを示す曲線。

TTT曲線

一般的にはスリーT曲線といわれており、温度―時間変態曲線を表したもので、過冷オーステナイトの組織変化を示している。=S曲線、恒温変態曲線