DC-IMPACT(低温プラズマ浸炭)処理
SUS鋼を対象にして、500℃未満の低温浸炭を行った場合、耐食性の低下を制御した浸炭が可能で、弊社の技術は航空宇宙に採択されています。又、複合処理として、シナジー・ハイブリッド表面改質技術を開発し、“ものづくり新撰”に認定されている新技術法のひとつです。
特徴
1.諸言
ステンレス鋼は、耐食性を有する鉄鋼材料として、各種業界で多く適用されている材料の一つである。ステンレス鋼を分類した場合、オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系、析出硬化系、二相系に大別することが出来る。近年、特に耐食性を重視したオーステナイト系ステンレス鋼の耐摩耗性を向上させる為に低温窒化処理、浸炭処理が注目され、数々の研究事例と一部実用化に向けた基礎実験レポートを確認することが出来る。標準仕様の窒化処理:450℃~580℃で処理された窒化組織は、窒化化合物、特に、CrNの化合物を生成し、Cr欠乏状態となり、不動態化によるオーステナイト系ステンレス鋼の耐食性維持特性を失い、耐食性を低下させることが知られている。これに対して、450℃以下で処理した場合、耐食性の低下を抑制した窒化処理が可能であることが判明してきた。つまり、窒化化合物を生成しない、いわゆる拡張オーステナイト組織となり、Crの欠乏状態を抑制し、表面硬化が可能なことを前提とした処理である。さて、当社で開発したDC-IMPACT処理は、析出硬化系ステンレス鋼の表面硬化技術として開発され炭素拡散による炭化物の生成、及びセメンタイトの生成による硬化技術として確立された。この工法は、JAXAの研究開発テーマでもある宇宙空間で、太陽電池パネルを駆動させる機構部品の長寿命化を図るプロジェクトにも採用され、実績を示している。低温域の処理において、窒素拡散だけではなく、炭素拡散も有効な表面硬化法であることも、近年確認されており、当社は窒素でなく炭素拡散に注目し、低温炭素拡散工法を検討する。我々が窒素ではなく炭素に注目したポイントは、いわゆる耐食性を有する硬化組織を生成するために窒化処理より浸炭(炭素拡散)工法の方が、処理温度を高く設定出来、拡散反応スピードが速いことである。つまり、窒化拡散方式より生産性に優れているという予測の基に研究を進めることとした。
(尚、窒素拡散(窒化方式)の基礎DATAは、本研究からは、省略させて頂きます。)
2.試験仕様/概略説明
[ⅰ] 試験仕様
Table-1) TP仕様 / SUS304・SUS316(DCI処理品 & 未処理品 の計4種類) (*冷間圧延鋼板を使用)
項目 | 内容 |
---|---|
固溶化熱処理条件(真空炉) | 1030℃×80分保持後、窒素ガス冷却(130Kp) |
DCI処理条件 | 420℃×25時間 / ガス比(CH4:H2)=1:20 / 真空度(Pa)=665 |
TP形状 | 50×50×1.2t |
Table-2) TP成分表(%)
SUS316
C
0.08以下
鋼種 | 成分 | |
---|---|---|
SUS304 | C | 0.08以下 |
Si | 1.00以下 | |
Mn | 2.00以下 | |
P | 0.045以下 | |
S | 0.03以下 | |
Ni | 8 ~ 10.5 | |
Cr | 18 ~ 20 | |
Mo | - | |
Si | 1.00以下 | |
Mn | 2.00以下 | |
P | 0.045以下 | |
S | 0.03以下 | |
Ni | 10 ~ 14.0 | |
Cr | 16 ~ 18 | |
Mo | 2 ~ 3 |
[ⅱ] 概略説明
本試験は、上記2種類のテストピースを作成し、表面組織写真、表面硬さ及び断面硬さ測定、塩水噴霧試験、CASS試験による耐食性試験、GDC、X線回折等の各種試験を実施し、オーステナイト系ステンレス鋼の表面硬さの向上と耐食性の維持を同時に実現した処理であることを証明する。
3.分析結果
[ⅰ] 表面組織写真
[ⅱ] 表面硬さ及び断面硬さ測定結果
[ⅲ] 塩水噴霧試験
[ⅳ] CASS試験
[ⅴ] アノード分析
[ⅵ] グロー放電発光分析 (GDS)
[ⅶ] X線回折 (X-RD)
4.結論
オーステナイト系ステンレス鋼に対して、DC-IMPACT(低温炭素拡散)処理は有効である事が解る。
1)Hv800以上の表面硬化が出来、耐摩耗性、耐摺動性を改善出来る。
2)本実験の塩水噴霧試験。CASS試験においては、耐食性を有する事が解った。通常、窒化処理等の拡散表面処理をした場合、
耐食性の低下を余儀なくされていたが、DC-IMPACTは、耐食・耐摩耗を有する環境下での適用が期待できる。
3)拡散傾斜が、窒化処理より緩やかであり、耐面圧強度に期待出来る。
4)非磁性である(窒化処理は、有磁性体となる)
5)窒化処理と異なり、溶接が出来る。
6)拡散層は、炭化物の生成がなく、拡張オーステナイト結晶構造になっていると推測される。
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