ガス軟窒化処理(SNプロセス)
鉄鋼材料の耐摩耗性、疲労強度、摺動性能の向上には、ガス軟窒化処理がおすすめです。
ガス軟窒化処理とは?
ガス軟窒化を行うと、金属表面に5μm~20μmほどの化合物層(ε層)が形成されます。
この化合物層は、窒化物と炭化物からなる層です。
ガス軟窒化処理は、窒素原子だけではなく炭素原子も含んだ雰囲気中で行われるためです。
そして、この化合物層よりも内側では、拡散層と呼ばれる窒化物の層が形成されています。
これら化合物層と拡散層とによって鉄鋼材料部品の耐摩耗性、疲労強度、摺動性能の向上が実現されます。
このため、自動車部品をはじめ、弱電部品、一般産業機器、金型など、幅広く行われている表面熱処理と言えます。
また、ガス軟窒化を含む窒化処理の特徴として、鉄鋼材料がオーステナイトに変態しない温度、およそ570℃前後で処理される点が挙げられます。
その結果、寸法変化・歪が小さくなります。
このように、金属表面の性能を高めつつ、寸法変化や歪をおさえられる点もガス軟窒化処理の優れた点です。
さらに、ほとんどの鉄鋼材料に対して、ガス軟窒化処理の適用は容易です。
ただし、SUS304のようなオーステナイト系ステンレスを代表として、ガス軟窒化処理の適用に注意が必要な鋼種もあります。
弊社では、このような鉄鋼材料に対しては、精密低温窒化処理(PSN処理)をご提案させていただいております。
特長
その他、ガス軟窒化処理の特長として、以下のようなものが挙げられます:
- 形状に左右されない。深穴、スリット等、塩浴窒化処理、プラズマ窒化処理では不向きな形状も容易に処理できる。
- 表面は、不純物、酸化膜等が付着することがなく、乳白色の綺麗な仕上がりとなる。
- 微小部品から大型部品まで、小ロットから量産まで容易に適用できる。
- 機械的特性の改善 ・耐摩耗性の向上(高硬度、低摩擦係数の化合物層の効果)
・疲労強度の向上(残留圧縮応力、結晶の転位、結晶の滑り破壊の抑制)
・耐食性の向上(化合物層の窒化物による耐食性の向上)
・耐熱性の向上(高温軟化性の改質)
適応材料
鉄鋼材料全般に適用できます。
窒化処理後の表面硬さ目安 | |
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材質 | 硬さ |
SPCC、SS400 | Hmv400以上 |
SUM系、S45C等炭素鋼 | |
SCM材、SNC、SNCM材 | Hmv600以上 |
NAK、HPM等プレハードン鋼 | Hmv600以上(材質により異なる) |
SACM645 | Hmv800以上 |
SKD-11、DC、SLDダイス鋼系 | |
SKH系、HAP、MH等高速度鋼 | |
SUS410、420、440 | Hmv800(1,000)以上 |
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